2013年3月12日火曜日

カプースチン・ピアノ協奏曲第六番ガイド

今日はいよいよカプースチンのピアノ協奏曲第6番が作曲されて20年目に日の目を見る日。ピアニスト・川上昌裕さんの初演にかける意気込みも素晴らしい。
さて、この曲がどんな曲なのか聞く前に心づもりが居る、という方にちょっとだけガイダンス。
カプースチン自身に関してはこちらをご覧下さい
ピアノとビックバンドのための協奏曲第六番1993年作曲。
編成: アルトサックス(フルート持ち替え), アルトサックス(クラリネット持ち替え),2テナーサックス(ソプラノサックス持ち替え)バリトンサックス,4トランペット,4トロンボーン,ドラムセット,ギター,コントラバス(ベースギター持ち替え)
今日は、フルートとクラリネット、ベースギターに関しては別の奏者によって演奏されます。

曲想はジャズを基調とし、クラシックの要素や多分にヴィルトゥオーゾピアノのパッセージがちりばめられています。高度なジャズセッションをやっているように聴こえるけれど、アドリブはなく一音一音きちんと作曲されています。
それだけに演奏する側に高度な音楽的能力が求められています。
三楽章構成
・第一楽章 Allgero
(A)スイング調の第一主題、(B)短いソロのあとトッカータのような第二主題、(C)三連符、三拍子を基調とし、ドラムが8ビードで刻む第三主題
(A)のイントロ-(B)-(A)-(C)-(A)-(B)-(A)-(B)-カデンツァ-(A)-(C)の短いリフレイン-コーダ
という三つのパターンを繰り返しで構成されています。
(A)は毎回変化するので特徴が判りづらいのですが、(B)、はピアノ、ドラム、ベースをトリオを中心に展開、(C)は同じコードのなかでシンコペーションのリズムが展開されて行くので、ノリノリに聴こえる事間違いなし。カデンツァはクラシックコンチェルトのカデンツァに聴こえる位技巧的。演奏時間8分30秒くらい??
・第二楽章 Larghetto
バラード風間奏曲
最初はフルートソロをバリトンサックス、コントラバスが支える感じ。最初のテーマはリフレインされるけれど、「形式」という程の物はもっていません。ピアノはゆったりとしたバンドのなかで実に技巧的なオブリガートを奏しています。最後にフルートとクラリネットで第三楽章のテーマが予告されます。演奏時間4分30秒?
・第三楽章
五拍子のと三拍子がころころ変わる刺激的な第一主題とピアノ、ドラム、ベースをトリオセッションが交差する、ロンドの様な楽章。トランペットが途中に直線的な第二主題を二回演奏します。

文章に書くと難しく感じますが、それは逆で文章で表現が出来る位、クラシックで刺激的なメロディーが繰り返されているということ。
初めて聞かれる方でも音楽に身を委ねて楽しめると思います。
こちらから、少しだけ各楽章の雰囲気を聞く事ができます。
さてさて、かなり刺激的な初演になる予感一杯です。

2013年3月11日月曜日

あれから

あれから2年。異国の地で震災を知ったことと、それから帰国する迄の焦燥感、そして帰国してからのショックは未だに忘れる事が出来ない。そのキモチを奇しくも先日の東京ニューシティ管弦楽団の定期の場で、ドビュッシーの「海」に寄せた詩の中で覚和歌子サンが詠み上げた。
・・・前略
海は云う:「にんげんは なぜ

わたしからうまれたのだといってきかないのだろう
・・中略・・・・
わたしがにんげんをうんだのなら
あのひ わたしはなぜ
なんぜんにんのいのちをいちどきに
ふたたびじぶんへと 
ひきとらなければならなかったのだろうか」
風は答える:
ほんとうのことはだれもしらない

わかっているのは
あすもおまえはしおからいみずをかぎりなくたたえ
ちきゅうはゆっくりとまわりつづけ
ひとはくらしをつなぐということ・・・・・」後略

あのとき何千人もの悲鳴がいちどに響き、私たちの心にはクサビがささった。
被災地や被災者を思いやる事はもちろん、あの時の起った事自体が、私たちの忘れていたなにかを各々の心に思い出させたにちがいない。
そのキモチを忘れない様に・・答えの出ない問いを追い求めて。

2012年12月18日火曜日

ハムエッグへの愛

人はそれぞれ心の中に自分の理想の目玉焼きを持っている(と私は思っている)。私の場合は、黄身がむき出しではなく少し白い薄皮が張ったやつがよい。毎朝5時に起きて少しスコアに目を通すと朝食を作り始めるのだけれど、周期的にハムエッグが食べたくなる。もうそうなると理想のハムエッグを作るべく、真剣勝負になる。ハムは本当はオーストリア辺りのショルダーハムが良いのだけれど、日本で手にはいるわけもなく、泣く泣く似た様なハムを買ってくる。卵選びも大切。最低限放し飼いの鶏の卵。
 いざフライパンに油を薄く引く。火加減に注意しながらハムを敷いてゆく。かるく片面をあぶったらひっくり返す。肉汁がでて柔らかい絨毯になったハムの上にそっと(あくまでもそっと!である)卵を割り落とす。ここで黄身が破れよう物ならその日一日ブルーである。しばらくして粉雪の様にぱらっと塩を散らす。卵の無い場所を狙って少量の水を注ぎ、蓋をする。これからが火加減と時間の勝負。旨く行けば固すぎもせず、柔らかすぎもしないふわっとしたハムの絨毯に乗ったハムエッグが出来上がる。
 これぞ人生の真剣勝負。オムレツにせよ卵料理は火加減が命。理想のハムエッグを求めて・・さてスコアよまなきゃ。

2012年12月1日土曜日

ベートーヴェン

ベートーヴェンのスコアと対峙すると、その要求の深さとエネルギーに圧倒される。もちろん書かれている「音符」そのものを並べるのはさほど難しい事ではないのかもしれないけれど、「音符」を「音楽」として実現する要求の高さは並外れて高いし、「音楽」を実現すための技術的要求度は非常に高い。
・ベートーヴェンが要求したsub Pの為に16分音符を一つあきらめれば格段に易しくなる。
・ベートーヴェンが要求したsfを一つあきらめれば格段に易しくなる。
・ハーモニーを無視して演奏すれば、格段に易しくなる。etc.etc...
 でも技術の容易さの為に捨てる物があってはベートーヴェンではない。それは演奏の本質を捨てる事ですらある。
 もちろん捨てる事があっても作品時代がものすごい力を持っているから「それなり」に聞かせる事が出来るのだけど。
でもベートーヴェンが要求したすべての事を実現すればそれはものすごい事になる。スコアから読み取る事が出来る要求度は果てしない・・・orz.....

2012年11月21日水曜日

落ち葉〜〜

この季節のジョギングは日々強まってゆく北風に逆らって、走る日々。でも色とりどりの枯葉を踏みしめる音はそれだけで音楽に感じる。紅葉の鮮やかな色のトンネルを抜けながら走ると、それだけでファンタジーが浮かんでくる。さっき迄少し辛かったジョギングは後ろから後押しされる様に、自然とスピードアップ。今朝も木々からインスピレーションを少しもらって、曲を書く為の新たなアイディア発見。

2012年4月21日土曜日

宴のあとの・・

エネスコの第一狂詩曲の最後のA-durの和音が終わった直後に鳴り響く拍手、スタンディングオペレーション!昨夜はブラショフ市と武蔵野市の友好20周年を記念するコンサート。
直前にしゃべったスピーチのせいか、それとも私の曲の最初のところでオーケストラが余りにも良い音を出してくれたせいか、柄にもなくちょっと緊張して始まったこの演奏会。
この20年という年月を振り返る素晴らしい機会になりました。

20年前、日本という国から見ればルーマニアは実際の距離よりも遠い国に感じられたことでしょう。それが当地のオーケストラの来日により、一気にその距離が縮まり、現在まで続くきっかけとなったこと。そして名ばかりの国際交流が多い中、実効的な国際交流を20年間もしかも市と市という関係で続けて来られた両市には驚嘆するばかりです。
振り返ってみれば一瞬の宴かも知れない、でも継続は着実な力になっています。

次の20年もステキな歳月になりますように。

2012年4月20日金曜日

仲間達と

今日はコンサート。20年間のうちにオーケストラの顔ぶれも大分替わりました。でも今回のコンサートには何人かのリタイアしたプレーヤーがエキストラとしてオーケストラに乗っていて、やっぱり20年前から弾いている彼らの顔を見ると安心します。同時に最近ではこのオーケストラでも頻繁には演奏しなくなったエネスコをみっちり仕込みます。若いメンバーのレパートリーとしてキチンと伝統が受け継がれる様に・・